凪待ち

「海に出てる方が身体にいいんだろ。」

「やっぱり男は女房だ。」

「あんたは死んだ亜弓ちゃんの大切な人だから。」

「こんな俺でも、この町でなら少しは役に立てるから。」

津波のお陰で新しい海になったんだ。」

「あいつと結婚してやっとまともな人間になったんだ。」

「亜弓ちゃんが惚れたんだから、あんたもきっといい人間なんだ。」

「こいつは俺の倅だ。」


信頼を裏切り、恩を仇で返す。

どこまでもクズ。

見ていて苛々する程の徹底したクズ。

それでも救いの糸が途切れる事が無い。

それがある限り、再生の可能性はある。

義父が最後まで見捨てなかったのは、

自分自身もそうやって救われた経験があったからだろう。

恩人の裏切り程、堪える罰も無い。

最後に全てが気持ち良く回収される訳ではない。

観る者を本気で不快にさせる。

それもまた作品の持つ見事な力だ。