居眠り磐音

「琴平に謙虚さがそなわれば鬼に金棒じゃがな。」

奈緒は、磐音様だけを想い、お待ち申し上げます。」

「これより先は、そなたら三人が力を合わせ、旧態依然とした藩の政を変えてゆくのじゃ。」

武家の妻が酒の肴のような噂になることがすでに油断。」

「慎之輔が舞どのを斬らねばならぬわけも、

おぬしが慎之輔を斬らねばならぬわけも、どこにもなかったのだぞ!」

「浪人さんよ、男たるもの、そうぺこぺこ頭を下げるもんじゃねぇぜ。」

「それがしは奈緒どのの兄を斬った。ともに生きる事は出来ぬ。」

「剣でも槍でもなく、金が動かしているのが今の世ぞ。」

「剣の腕より、私は坂崎さんのお人柄に惚れてお願いしたのですよ。」

「居眠りしているように見せて、人が間合いに入ろうとすると、するっと逃げてしまう。」

「今、ある事を突き進めば、新たな道も開けましょう。」

「深川の女はこれくらいの事は出来るの。」

「侍は侍。商人とはちゃいますよってなぁ。

ほんまに追い詰められた時、お役に立ちまっしゃろかな。」

「見せたろやないか。田沼の世が南鐐の重みで傾いて、つぶれていくさまを!」

「眠たい事言うたらあきまへんなぁ。あんたが蒔いた種でっせ。」

「あんたはこの先も人を斬る。何人も、何十人も。

その度に思い出すんや。竹馬の友を斬った手触りを。地獄やでぇ。」

「地獄であることなどもとより承知じゃ。友のおらぬ世で。愛しい女に二度と会えぬ世で。

生きてゆくなど、死ぬよりも酷ぞ!だがそれがしは選んだのだ。生きる事を。」

「ごく当たり前の穏やかな人々の暮らし。我と我が友が永遠に喪うたもの。

それが脅かされる事あらば、断じて見過ごしはせぬ。それが地獄の道でも、生きて進む。」

「会って磐音様の苦しみを共に分かち合いたかった。」

奈緒南天になります。冬が寒ければ寒いほど、赤く鮮やかに実る南天に。」

「愛しい磐音様と会えぬ時を偲び抜き、強く生きて参ります。」

「どうか奈緒の選んだ道を悲しまないで下さいませ。憐れまないで下さいませ。」

「今までも。これからも。何処に居ようとも。何をしていようとも。

奈緒は磐音様だけの妻にございます。」


友を殺めたという十字架を背負って生きるのは重い。

ただ地獄を承知で生きる事は強さの証でもある。

辛い境遇の中でも朽ちる事なく、自身の道を定め進んでいく奈緒

その姿は切なくも凛とした美しさがある。

悪どい商人を知恵で出し抜くという展開は面白い。

映画を見た時点では掴み切れなかったが、

脚本を読み返してみて、改めて作品に込められた深さに気が付く事が出来た。

鑑賞の特典として脚本を貰えるのは有り難いサービスだった。