予告犯

「人は自尊心が無くては生きていけない。

俺が最も憎むのは、それを奪おうとする何かだ。」

「ごめんな。お前が腎臓を売ってまで来ようとした国がこの様で。」

「人はどんな小さな事でも動くんです。それが誰かのためになるなら。」

「あなたは頑張れるだけ良かったんです。」

「この世界は生きる価値がある。」


一度社会のレールからはみ出してしまった者の存在は、社会からは見えなくなる。

声は届かなくなる。

ネットに充満する社会への鬱屈。

ネットの住人がどこまでも無責任な傍観者であっても、

彼らにとって、この犯人の言葉は、誰よりも自身の代弁者として突き刺さる。

自分の不幸を社会のせいにするな。

そんな正論だけで、責任を個人に押し付けられるほど、

この社会はまともで立派なものだろうか。

予告犯が正義か悪かは、どの側から見るかによって変わるものだ。


ちゃんとしたエンターテイメント作品でありながら、

その中で今の時代を映し出す。

いろいろと考えさせられるという意味でも、

中村義洋監督の作品は見応えがあって良かった。