あん

「この世にあるものは、全て言葉を持っているのよ。」

「こちらに非は無いつもりで生きていても、

世間の無理解に押し潰されてしまう事はあります。」

「おいしい時は、笑うのよ。」

「私達は、この世を見るために、聞くために生まれてきた。

だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。」


どれだけその「あん」が美味しくても、

世間の心ない偏見から、すうっと人々が離れていく。

もちろん自分に非はなくても、その原因を察して身を引いていく。

引かざるを得ない社会が何ともいたたまれなく思えた。

徳江さんが「あん」を作っている時の本当に楽しそうな様子。

それ故に、療養所で「楽しかった」と振り返り、笑顔を浮かべながら涙を流すシーンが胸に迫った。

樹木希林さんの言葉遣い、表情、仕草が生み出す優しく温かな空気感。

永瀬正敏さんの寡黙ながら、胸の奥に熱い思いを秘めた演技。

切なくも温かい物語に、思わず涙が溢れて来る作品だった。