ただマイヨ・ジョーヌのためでなく

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ランス・アームストロング」

生存確率の極めて低い癌を乗り越え、前人未到ツール・ド・フランス7連覇を成し遂げた

偉大なる自転車乗り。これは彼の書いた初めての自著である。



いまだかつて、これほど人生の示唆に富んだ本を読んだことがあっただろうか。

読みながら、引き込まれ、熱くなり、生きる勇気を与えられた本は…


これは、ただのサクセスストーリーではない。

これは、ただのラブストーリーでもない。

そして、ただの闘病記でもない。


最高のサクセスストーリーであり、

最高のラブストーリーであり、

最高の闘病記である。


ただそう表現してみても、この本の持つ本質を言い表せてはいない。

もしこれが普通の癌の闘病記であるなら、

病気を克服したところで、人々は誉めたたえ、ハッピーエンドで終わる。

この本のもっとも輝きを放つのは、その先だ。



この本を読んで、一番感じたことは何かと問われたら、きっとこう答える。


人生は続くということ



世界最高の栄誉を手に入れようと、明日は来る。

生存確率の極めて低い難病を克服しようと、明日は来る。

明日が来る以上、人はまた新しい一歩を踏み始めなければならない。

過去がどんなに光り輝いていようが、暗く重苦しく悲惨なものであろうが、

いつまでも過去の思い出を語りながら生きていくことはできない。



以下、本書に登場した珠玉の言葉を紹介します。


・癌は僕の人生に起こった最良のことだ。

・よく訊かれるのは、「癌になって何が変わりましたか」という質問だ。
 しかし本当に訊くべきは、何か変わらなかったものがあるか、だ。

・人は生きる。鮮やかに。病気だったとき、僕はそれまでの一回の自転車レースの中で見たより、
 もっと多くの美しいもの、勝利、真実をたった一日の間に見た。

・病気は僕という人間を、屈辱的なまでに素っ裸にし、僕は容赦のない目で
 自分の人生を振り返ることを余儀なくされた。

・あらゆるマイナスをプラスに変えなさい。無駄なことは何一つない。
 あらゆることを利用しなさい。昔の傷や屈辱は張り合うエネルギーのもとになる。

・人生の中でも、僕たちはいくつもの違った状況に直面する。
 時に後退を余儀なくされ、失敗と素手で格闘し、雨の中では頭を垂れる。
 それでも何とかして毅然と立ち、少しでも希望を持ちたいと思っている。

・ツール・ド・フランスは単なる自転車レースではない。それは試練だ。
 ツールは僕の肉体を試し、精神を試し、そして道徳的にも僕という人間を試すのだ。

・自転車に乗ることは、とてもハードで、その苦しさたるや言葉では言えない。
 しかしだからこそ、すべてを洗い清めてくれるのだ。

・僕はなぜ自分が自転車に乗るのか、はっきり分かった。 
 ペダルをこぎ続けることができるなら、きっとそれほど悪くない。

・恐怖を体験すると、自分の弱さがわかり、その人は変わる。 この病気は僕に、
 人間としての自己を問い、これまでとは違った価値観を見出すことをしいたのだ。

・僕はそれまでの人生のほとんどを、勝つか負けるかという、単純な生き方をしてきた。
 しかし癌は僕に、あいまいさに耐えることを教えてくれた。

・信じることがなければ、僕たちは毎日、圧倒されるような運命の中に、
 素手で置き去りにされるようなものだ。信じることは勇気の一つの形だ。

・人生に真に危難を招くのは、突然の病や天変地異や、最後の審判ではない。
 落胆と失望こそが人を危機に陥れるのだ。

・自転車に乗るには理由があった。
 みんなに、僕は大丈夫だ、まだ自転車に乗れるということを見てほしかった。
 そしてたぶん僕は、自分自身にも証明したかった。

・癌はチャンスであり、責任でもある。
 癌は第二の人生、内的生活、より良い生活への道になりうる。

・運動選手である僕たちが、社会に対してできる働きの一つは、
 人間の力でここまでできる、という可能性を示すことができることだ。

・僕にとって、確かなものは、キークだけだった。 自分が生きるのか死ぬのかもわからなかったし、
 もし生きたとしても何を望んでいるのかもわからなかった。
 でも僕はキークを愛していた。

・癌を乗り越えるとは、どういうことだろう。
 生死をかけて闘った後で世の中に戻っていくとき、その精神的問題に対処する仕方を
 教えてくれるようなサポート・システムはない。

・僕の人生は長くつらい上り坂を登るためにある。

・癌からの再生で学んだのは、絶望の叫びが終わり、自暴自棄と危機が去り、
 病気の事実を受け入れ、健康が戻ってきたことを祝った後には、
 以前と変わらぬ日常と習慣があるということだ。

・僕はツール・ド・フランス優勝者といわれるよりは、癌生還者の肩書きの方を選ぶ。
 それは癌が人間として、男として、息子として、父親としての僕に
 かけがえのないものを与えてくれたからだ。

・勇気とは、人が危険に対し、恐れることなく、固い決意をもって立ち向かうことを可能にする
 精神的力だ。

・僕たちは自分が思っているより、ずっと素晴らしい人間だ。

・癌は死の一つの形ではない。それは生きることの一部なのだ。



長くなりましたが、自分自身に再び言い聞かせるつもりで綴ってみました。

すでにアメリカでベストセラーになったものですので、ご存じの人もいるかと思います。

ただ、もしまだこの本の存在を知らなかった人が、

この中の言葉のどれか一つでも心に引っ掛かり、

この本を手にし、読んでもらえるのなら幸せに思います。


It's Not About the Bike (自転車についての話じゃない)


そのタイトルが示すとおり、

世界最高の自転車乗りが書いた、自転車についての話じゃない本です。

本当に多くのことを教えてくれます。

是非、ご一読を!