『無名』

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父は、運命としての死に、ただ静かに従っただけだった。

弱さからでもなく、強さからでもなく、ただ静かに…

―――『無名』P235 沢木耕太郎


おそらく、死者は、その最もふさわしい時に死ぬことになるはずなのだ。

どんな月であれ、死んだ月が彼の月なのだ。

―――『無名』P243 沢木耕太郎


数年前、この本が原作となったドラマを見た。

そのドラマを見て、強くこう思った事を今でも覚えている。

たとえどんなに「無名」と言われる人の人生であっても、


必ず一つは、ドラマになる場面があるんだ。


そして、数年たった今、改めて原作となったこの本を読んだ。

読み終わって、ふと思った。

あの時、自分がしていた解釈が、本当にこの本の伝えたいことだったのか、と。

「無名な人生にも、必ずドラマがある」

確かにそうかもしれないが、そうではないのかもしれない。

無名な人生ならば、その無名な人生のありのままを受け入れる。


変に飾り立てて、無理やりドラマに仕立て上げる必要はない。


そのある意味での「潔さ」が、この本の本質なのかも知れない。

そう考えることで、「無名」である事を肯定出来るのかも知れない。


これは、あくまで私の感想であり、見解です。

これは、「無名」であった父の死に立ち会った作者が、

その時に何を感じ、何を思ったのかを綴った本です。

いろんな読み方が出来ると思いますので、

是非、読んでみて下さい。