来る

「あいつは人のいる所にしか顔を出さない。」

「わかんない、男は。一緒に棲んでみないと。」

「命の形に感動し、命の音にただ涙する。」

「人は都合の悪い事は妖怪のせいにしてきた。」

「本当の事を言われてキレる奴は馬鹿だ。」

「大事なのは、“どうして”ではなく“どうするか”。」

「子供は時々死に惹かれ、死の臭いを嗅ぎたがる。」

「死者は生きている命に憧れ、それを奪いに来る。」

「子返し。生まれた子を神に返す。」

「失うのが恐いから、失いたくないものを作らない。」

「命が生まれても喜ばない。命が消えても悲しまない。」

「生きているという事は、痛いという事。」

「闇の中で信じられるのは、痛みだけ。」


妖怪や怪物の類は人間の悪事を隠す為に生まれる。

土着的な民間伝承が纏う薄気味悪さの所以はこの辺りにあるのかも知れない。

幸せが眩しければ眩しいほど、それが失われた時の闇も深い。

とにかく得体は知れないが、「来る」という一点で進んでいく。

それ自体は悪くはないが、結局意味も無いまま終わってしまった。

ホラーは、その世界がどんなに意味不明でも構わない。

ただ一点、怖がらせてくれさえすれば。

だからこそ、意味も分からず、怖くもなかった時の空しさは大きい。