アキレスと亀
1秒間は、30枚のフレームから出来ている。
1分間は、1800枚のフレームから出来ている。
2時間は、2106000枚のフレームから出来ている。
絵画や写真は、流れていく日常の中の一瞬を
一枚のフレームとして切り抜いたもの。
その一枚一枚が折り重なって、やがて映画になる。
たけしさんの映画は、
そのスクリーンに映し出される一枚一枚が
本当にどこを切り取っても単独で成立しうる絵になっている。
「芸術とは一体何なのか?」
芸術という魔法のような言葉に囚われ、人生まで絡めとられているような
主人公「真知寿」を通じて、
打ち寄せる波のように、この問いが見ているものに絶えず迫ってくる。
映画の中には、本当に様々なアートのパターンが登場してくる。
何が良くて、何が悪いのか?
分からずに右往左往する真知寿の奮闘ぶりが時に笑いを誘う。
芸術に答えは無い。
答えを出すことは不可能だろうし、それを安易に求めてはいけないのかも知れない。
期待してはいけない。
ところがラスト。
たけしさんは、想像以上に納得させられる解答を見せつけてくれた。
芸術の価値を決めるものは、一体何なのか?
それは、
に他ならない。
作り手と受け手との間にその心が生まれた瞬間
その「作品」は「芸術」から「手段」に変わり、
その「心」が「根拠」から「芸術」に変わる。
結局は、「揺さぶられた人間の心」こそがアートなんだ。
ラスト、二人に蹴られる空き缶を見ながら、
あまりの見事な描き方に鳥肌が立った。