のぼうの城

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だが、馬鹿者はこのとき、

侍でもなければ成田家の一門でもない、ただの男になり果てていた。

強者の侮辱にへつらい顔で臨むなら、その者はすでに男ではない。

強者の侮辱と不当な要求に断固、否と叫ぶ者を勇者と呼ぶなら、

紛れもなくこの男は、満座の中でただ一人の勇者であった。

―――『のぼうの城』P139



毎週チェックしている「王様のブランチ」で初めて知ったこの本。

流行りものは、手を出さないでおきたい性質ですが、

どうしても読みたい衝動に勝てず、読みました。

まず、その感想を一言で表現するなら、

時代小説の余分なものを全部削ぎ落として


かっこいい部分のみを抽出した感じ


時代小説特有の長大で取っ付きにくいところがなく、

数ページ読んだ所で、その世界に引きずり込まれた。

時代小説の入り口としては最適!

特にラストのかっこいい男同士の粋な掛け合いは、鳥肌モノの爽快さだった。

登場人物それぞれが魅力的だけれど、

個人的には、三成が良かったなぁ。

きっとどこまでも堅物で面白みにはかけるんだろうけど、

どこまでも貫くその「真っ直ぐさ」にほれたなぁ。



時代小説の魅力も、少し分かった。

それは、どこか客観的に共感できるところなんだろう。

たぶん現代小説で、

自分と似たような人物が描かれていて、同じように悩んだりしていたら、

共感できるだろうけど、どこか時間と共に印象は薄れてしまうような気がする。

その反面、時代小説は、

「時間」という確固たる隔たりがありかつ、ある程度評価が定まっている分、

安心して共感できるという部分があるように思う。

こんな昔でも自分と同じような考えの人間がいたというのが、何だかうれしい。



やっぱり「今」だけに囚われて、身動きできなくなってしまうなら、

ちょっと過去に触れてみればいい。

こんなにかっこいい男たちがいたのかと気がつく。

そして、かっこいい男たちの生き様は、この先の未来を照らしてくれる。



たった一冊時代モノを読んだだけなのに、まんまと影響されてしまったなぁ。