マスカレード・ホテル

「お客様と無駄な駆け引きはしない。」

「ここではルールを決めるのはお客様です。だからお客様のルール違反は有り得ません。

テルマンはそのルールに従うだけ。」

「刑事の仕事が人を疑う事なら、ホテルマンの仕事はお客様を信じる事です。」

「私達はホテルのサービスを提供しただけです。」

「仮説なら後は証明するだけ。」

「ホテルマンがこれだけ多くの人と関わり合いながら、ミスをしない方がおかしい。」

「市民を犯罪から守る事が警察に出来る最大のサービスなんです。」

「ゴミ掃除と同じで、誰かがやらないといけないんです。」

「お客様はそれぞれ仮面をかけてやって来ます。

テルマンはその素顔を想像しつつも、決してその仮面を外そうとしてはならないんです。」

「お客様は一時の仮面舞踏会を楽しんでいるんです。」

「ホテルを出たら、ホテルマンは無力です。後は祈るだけです。

だからホテルの中では出来る限りの事をするんです。」


不特定多数の人間が交錯し、その誰もが現実とは異なる仮面を付けている。

ホテルという空間には、何かしら物語が生まれる土壌があるのかも知れない。

人を疑うという刑事の矜持。

人を信じるというホテルマンの矜持。

相反するからこそ、それぞれの矜持が際立つ。

それが互いにぶつかり合いながらも、理解を深めていく所が面白い。

ミステリーもさることながら、

ホテルという舞台が生み出すドラマと、

仕事に対する信念が魅力的な作品だった。