キャプテン・フィリップス

「何も漁師が人質をとって金を要求しなくても、他の道があるだろうに。」

アメリカならな。」


たとえいかなる理由があろうとも、暴力ほど理不尽なものはない。

ただ極限の状況においては、いかなる正論も、いかなる説得も力を持たない。

結局、暴力に対抗出来るのは、暴力でしかないという

生々しい現実を突き付けられた気がした。

ソマリアにおける海賊の被害。

ニュースでは掴み切れないそのイメージを捉らえる事が出来た。

巨大な貨物船が、その何十分の一にも満たない小船に、

いとも簡単に制圧されてしまう様は、ある意味衝撃的だった。

「暴力」という理不尽に苛立ちを感じながら。

生きるために「暴力」を必要とする人間にとっては、

法も倫理も通用しないという現実が確かに存在しているのだろう。

個別の事件をいくら対処しても、その背後にあるより大きな構造を解決しない限り、

根本的な解決にはならない海賊問題の根深さも感じた。


それにしても、後半の緊迫感は凄かった。

眼のギラつき、滲む汗、荒々しい息遣い。

全身に力が入り、まさに「息詰まる」という感覚を味わった。

見終わった後で、ぐったりするほどに。

それだけ引き込まれる良作だった。