少年H

「信仰は心の中にある。

それを守るのは、真っ正面から抵抗することだけではない。」

「何を我慢しなければならないのかを知っていれば、我慢出来る。

戦争が終わった時に、恥ずかしい人間になっていないように。」

「自分の目で見て、自分の耳で聞いて、信じられるのは自分だ。」


この世界に絶対的な価値観というものは存在しない。

どんなに正しく見える価値観があったとしても、道を誤る可能性はある。

そんな時に、もし回りに多様な価値観があれば、誤った道を修正出来るかもしれない。

戦争への道を走ったかつての日本。

国民に対して、一つの価値観を強要し、異なるものは弾圧する。

自由な思想・信条を認めない社会がいかに恐ろしいかを見た。

そして敗戦を経て、価値観が真逆に転換する。

子供たちにしたら、大いに混乱したに違いない。

何が正しく、何が間違っているか。

結局は、自分で考え、自分で見出だしていくしかないということだろう。

戦時中、あれだけ自分の言葉で子供に説いていた父親が、

敗戦を経て、呆然として語るべき言葉を失ってしまう。

正論を誇ることにすら、虚しさを覚えていたのだろうか。

あの姿が、妙にリアリティを持って感じられた。