フライト

「私は、生涯で初めて自由になれた。」


卓越した技術を有したアルコール中毒パイロット。

彼は、英雄か、犯罪者か。

確かに彼がいれば「安全」かもしれない。

ただ、彼がいるからと言って「安心」を得られるとは限らない。

「安心」とは、技術のみでカバー出来るものではない。


さらにもう一つ大きなテーマを投げ掛ける。

人として守るべき大切なものの一つは、「正直であること」ではないか。

嘘の地表に建てられた家は、どんなに大きく立派であったとしても、

やはり幻でしかなく、どこまで行っても救われる事はない。

確かに彼は、最後の質問に正直に答える事で多くのものを失った。

それでもその代わりに手に入れたものは、大きく尊いものだったのだろう。

「自由になれた」

そう語る彼の清々しい表情がそれを如実に物語っていた。