遺体 明日への十日間

「死体ではなく、ご遺体なんです。」


「遺体安置所」

「安らかに」という言葉からは程遠い、壮絶な現場があったのだろう。

最も直視しづらく、最も直視しなければならない現場が。

「死者〇人」

人間が数字に置き換わった時、途端にそこにあった生々しさが消えてしまう。

数字よりも、目を背けたくなる様な「生々しさ」の方こそ、

しっかりと記憶に留めておく必要があるだろう。


実に淡々と描かれていた。

もしこれがフィクションであるならば、もっと派手なトラブルなり揉め事が起こったことだろう。

ただ、そこには迷いや戸惑いこそあれ、根本的な対立などは存在しない。

それこそ、当時の誰もが同じベクトルに向いていた証だろう。

捏造のドラマ性は、ノンフィクションへの冒涜になる。

淡々とした作りの中に、事実への真摯な姿勢が伺えた。