待合室
「何もないという贅沢」
名所もなく、温泉もなく、雪が降ればその色さえも失われてしまう
東北の山間にある小さな駅。
そこにあるノートに人は、様々な言葉をつないでいく。
「何もない」ということは、
詰まる所、否応なく自分自身と相対峙することを余儀なくされる。
普段「何かある」事で、見えないもの。
普段「何かある」事で、見ようとしないもの。
映画の中で出てきたように、
「何もない」ということは、厳しい反面、贅沢なことなのかも知れない。
果たして最近、「何もない」という状況に自身を置くことがあっただろうか?
自身と対峙することを恐れ、無理にでも「何か」を作ってはいないだろうか?
駅に置いてあるノート。
様々な人が匿名で、書いているという点については、
ネット上の掲示板やブログとにているのかも知れない。
ただ大きく異なるのは、
自分の書いた文章にコメントをもらったとしても、
それを見るためには、再びその駅に足を運ばなければならないという事。
つまり、その本人には読まれる事がないという事を承知の上で
ずっと、メッセージを書き続けてることになる。
しかし、それこそが尊く、何かを訴えかけてくるように思える。
雪深い東北の情景と、温もりある東北弁の響きが
張りつめた気持ちを解きほぐしてくれる、そんな一本でした。