書店宇宙論①

たまに、どうしても手に入れたい本があって、

いわゆる“大型書店”という所に行く事がある。

意気揚々と中に入っていくものの、

そこで“立ちくらみ”にも似たような感覚に襲われる。

もっと言えば、無重力の宇宙空間に突然放り出されたような

まさに茫然自失の体だ。

「一体、ここにはどれだけの本があるんだ?」


身近にある駅前の書店や1フロアーのみの書店だと、

そんな感覚に襲われることはない。

大体置いてあるのは、話題の本や新刊本、

その隙間を縫うように長年売れている有名なベストセラーなど。

言わば、頭の中で整理が出来る範囲ということだ。

ところがそれが、

ビル全体が書店で、複数階が本で埋め尽くされているような場合だと

そうはいかない。

とにかくそこには、

「読んだ事は無いけれど、とりあえず名前ぐらいは知っている」

という本の何倍もの本が存在しているわけだ。

何も働きかけをしなくても、自動的に情報が入ってくるような現代。

「街の本屋さん」がその情報の集まりレベルとするならば、

巨大書店とは、こちらが能動的に働きかけをしても到底追いつけない。


「わずかでも自分のアンテナにひっかかった本は、躊躇わずに読む」

そう意気込んでみたものの、

書店でそのアンテナを立てようものなら、大変なことになる。

そもそも、

「アンテナにびた一文接触しない本」を探すほうが難しい。

どんな本にしろ、そこに置かれるまでに携わった人の様々な工夫に満ちている。

タイトルにしろ、表紙デザインにしろ、配置にしろ。

一度目に付いた時点で、もう出会ってしまったということになる。

しかし、目の前に広がる膨大な量の書籍を目の当たりにすると、

その果てしなさに“ある種の無力感”すら覚えてしまう。

タイトルを把握するだけでも大変なのに、

全ての中身に目を通すなんて…



そもそも、

この世界には、一体どれだけの書物が存在しているのだろう?

そして、

一人の人間が一生をかけて読むことの出来る量はどれくらいなのだろう?