ある町の高い煙突

「煙の化け物を呼び込んだのは、わしの責任でもある。」

「銅は国の礎だ。」

「酒飲んで、煙草吹かしながら勝てると思ったら、とんだ了見違いだ。」

「冷静に。合理的に。」

「煙害はなくならない。だったら金で済ますしかないじゃないですか。」

「利益が出なければ鉱山は潰れる。だが地元の理解がなければ事業は続けられない。」

「煙害がある限り私達は敵同士か。」

「交渉じゃない。これは地べた這って生きる者の抗議だ。」

「農民住民と企業の共存は無理だ。」

「怒りは本来の目的を見失わせる。」

「孫作の弱音は村の本音だ。」

「理想無くして何の事業か!」


国策の為には寒村は潰しても構わない。

国の横暴の前で鍵を握るのは、狭間に立つ事業者の姿勢だ。

住民の理解が得られないのなら、会社は潰しても構わない。

そこまで言い切れる経営者は中々いない。

ただその強き理想があればこそ、住民と企業が一体となって難題に立ち向かえたのだろう。

対立よりも協力へ。

敵同士よりも仲間同士へ。

やはりそれが物事を進める為の王道であり近道でもあると思えた。