長いお別れ

「いつかっていうのは、何もしないで待っている人には絶対に来ない。」

「大丈夫だよ。校長先生にまでなったお父さんなんだから。」

「家にいるのに家に帰りたいって言うの。」

「最近、いろんなものが遠いんだ。」

「遠いっていうのは寂しいね。」

「自己責任で生きていくのが基本なんじゃないか。」

「繋がらないっていうのは切ないね。」

「何でお父さんの気持ちがあなた達に分かるの。」

「生きている限り、生きていて欲しい。」

認知症の事は、長いお別れって言うんだ。」


そうだったのかと最後の最後に気付かされた。

認知症と向き合う事は、長い長い時間をかけて別れをする事だと。

遠ざかっていくこれまでの日々を振り返り、

醜い部分にも触れながら、改めてその人と出会い直す。

どれだけ大変でも、どれだけ煩わしくても、

投げ出す事なく、最後の最後まで家族であり続ける。

そこに家族としての絆の強さを見た気がした。

長いお別れを通して、更に家族の強度が増した様にも思えた。