悪の教典

容姿、性格、人望…

誰もが羨む要素を兼ね備えていながら、

それでいて本能的な嫉妬心や嫌悪感を抱かせない人間がいたとしたら、

その人間には必ず何かが欠けている。

真に恐るるべき狂気とは、「悪意の感情」ではなく、「感情の喪失」である。

その事をまざまざと見せ付けられた。

感情を失った人間にとっては、精神分析学のご立派な理論も意味を為さない。



軽快なミュージックに乗せて、テンポ良く人間が死んでゆく。

本来存在するべき葛藤や躊躇の類の一切が排除されている分、

その異常性がより際立っていた。

時には笑いすら漏れるほどに、見る側の感情のバランスも崩されていく。

相対する視覚と音響の効果を組み合わせ事も巧みな演出だろう。

良かれあしかれ強烈なインパクトの残る作品だった。

それは、映画「告白」を見た時の印象に似ている。

最初の貴志先生の台詞にしても、実に味なことをしてくれる。