希望の国

「日本人が日本を歩いて、なんで日本人に怒られるの?」

「見えない弾が飛び交ってるの!」


園子温監督の「希望の国

あの過ちを忘れるんじゃないぞと、強烈に訴えかけてくる。

ここに映し出された世界を「異常」だと言って笑えるか?

笑えるとしたら、悲劇はきっと繰り返す。

空気に線が引けないように、人の心に線を引くことは出来ない。

どうしようもない「不安」に対して「過剰反応」を取らざるを得ない心情を、

決して笑い飛ばすことは出来ない。

果てしない絶望の中で、何とか生きていくためには、

ひたすら「現実」から目を逸らし続けるか、

「愛」という抽象的なものに縋り付くしかないのかも知れない。

しかし、それを一概に否定することは出来ない。

それもまた「希望」であることに違いない。


福島の事故という「過去」を描いているのではなく、

あの惨禍を経てなお繰り返された「未来」を描いている。

今変わらなければ、その未来はきっと「現実」になる。


「逃げることは強さだ。強い人間だから、逃げられるんだ。」