アーティスト

色と声を無くすだけで、映画はこんなにも濃密になるのか。

表情は豊かさを増し、動きはより伸びやかになる。

映画の持つ本来の魅力に鳥肌が立った…。


確かにそう思ったが、

それは色も声もあって当たり前の今だからこそ言えるのかもしれない。

モノクロとサイレントしかなかった当時にすれば、

その演技は「過剰」と変化し、やがて「飽き」を招く。


「新鮮さを求める観衆は、常に正しい」


技術の進歩によって、映画はトーキーの時代へ。

時代に置いていかれた「スター」は、

「アーティスト」と名前を変えて生きていく。

過去の栄光とプライドを拠り所にし、時に縛られながら。

それは、一度も良き時代を知らない人間よりも過酷なものだろう。

それでも、何とか新しい時代に向き合おうとした時、道は開けるのだ。


「音」「声」のインサートの仕方が実に洒落ていた。

清々しい余韻の残るラストも良かった。