エンディングノート

「わたしは死ねるでしょうか。上手に死ねるでしょうか。」


映画を見て、こんなにも泣けたのはいつぶりだろうか。

下手をすると、声が漏れてしまいそうなくらいに。


人が死を迎えるまでの一部始終を、

こんなにもリアルに追っていくというのは、かつてない体験だった。

お父さんが、

明るく振る舞えば振舞うほど、周りに気を使えば使うほど、

反比例するかのように、涙が溢れてきた。

このこみ上げて来る感情は、

主役であるお父さんのキャラクターに拠るところが大きいだろう。

典型的なサラリーマンのような生真面目さで、

来るべき「そのとき」に備えて、淡々と段取りをしていく。

もしこれが、全てを投げ出して自暴自棄になったり、

現実を受け入れずに目を逸らし続けていたら、

印象も大きく変わっていたはずだ。


時に人は、「死にたい」「死んでもいい」と口にする。

しかし、実際「死ぬということ」は、最後の最期の「大仕事」なのだ。

お父さんは、よくここまでやったと思う。

誰にでもできそうで、なかなかできそうにない。

そしてまた、この映画は、娘だからこそ撮れた作品だろう。



「そろそろ失礼しなければ。 営業マンは引き際が肝心です。」