スラムドッグミリオネア

イメージ 1

“知りたい知識”を積み重ねる事が、「夢を追う」という事ならば

“知らざるを得ない知識”を積み重ねる事は、即ち「生きる」という事だ。


「僕は、答えを知っていたんだ」

冒頭に出てきたその台詞を聞いた時、

それまで半信半疑だった期待は、なぜか確信へと変わった。


学のないスラム育ちの青年が知るはずのないクイズの答えを知っていた。

これは、「インチキ」か「天才」かそれとも…


物語は、ミリオネアの番組本番と

不正の疑いをかけられた主人公の青年ジャマールに対する取り調べという2本の縦糸に

インドのスラム街で育ったジャマールの半生が横糸として編みこまれる形で進行していく。


下手をすると重く沈んでしまいそうなテーマを扱いながら、

見ている者にそう感じさせないのは、

テンポの早いカット割りと、軽快な音楽

そして何より前半部においては、登場する子供たちの目の輝きがそうさせていた。

ジャマールたちは、望む望まないに関わらず

そうせざるを得ない運命のようなものにしたがって成長していく。


「一生懸命努力をすれば必ず報われる」

豊かな国においては、美しく響くそんな言葉もここではむなしく聞こえる。

人生には「幸運」を与えられる事が必要なのだ。

小さな子どもですらすでにそれを理解している。

特にそれを印象づけるシーンが

目を焼かれ盲目になり街頭で歌を歌う少年がジャマールと再会するシーン。

本当ならば、ジャマールに対して恨み事の一つでもはいて叱るべき所を

恨みとまではいかなくても、嫉妬の一つも表して当然の場面で

その少年は一言「立派になったね」と言葉をかける。

そこにはマイナスのオーラは微塵も感じられず、

運命を受け入れる強さのようなものを感じ、思わず目頭が熱くなった。


見終わった後、残った印象は、意外にも軽やかなものだった。

作品の持つテーマの重さ、深さに加え

映画が持つべきエンターテインメント性が想像以上に秀逸だったのだ。


アカデミー賞受賞の冠は伊達じゃない」

と今回は納得させられた一作でした。