風が強く吹いている
物理的に同じ道を走っても、たどりつく場所はそれぞれ違う。 どこかにある自分のためのゴール地点を、探して走る。 考え、迷い、まちがえてはやり直す。 もしも答えが、到達するところがひとつだったなら。 長距離に、これほどまで魅惑されはしなかっただろう。 ――― P458
熱く、清々しく、そして最高に面白い。
「箱根駅伝」という誰もがその存在を知っている割に、
実は、その深い部分までは知っていなかったこのテーマを、
小説というドラマを使って見事に描き出してくれた。
「走るってなに?」
あまりにシンプルすぎるこの問いかけの答えは、
とても容易に見つかるものではない。
全体を貫くこのテーマに対して、
登場人物のそれぞれが、それぞれの答えを探していく。
チームスポーツを描く時の宿命の一つに登場人物の人数がある。
野球なら9人、サッカーなら11人…
主要人物だけ描けばいいのかもしれないが、
いてもいなくてもさほど影響しない人間が一人でも存在してしまうと、
やはりどこか色褪せを感じてしまう。
登場する10人の個性は、各区間の特色を浮き彫りにし、
各区間の特色は、10人の個性にさらなる彩りを加える。
一人として薄味はいなく、
まるでパズルが組みあがっていくように
「この区は、こいつが走るんだ」というのが気持ちがいい位に面白い。
駅伝ならではの描写方法が実に見事で、思わず感嘆必至!
箱根駅伝を知っている人にも、知らない人にも、好きな人にも、嫌いな人にも
自信をもっておススメします!
知識もつきますし。