インドで考えたこと

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人々が、この世の中について、人間について、

あるいは日本、または近代日本文化のあり方などについて、

新しい着想や発想を持つためには、

ときどきおのおのの生活の枠をはずして、その生活の枠の中から出来るだけ遠く出て、

いわば考えてみたところで仕方のないような、

始末にもなんにもおえないようなものにぶつかってみる必要が、どうしてもある。


冒頭のこの文章からぐっとひきつけられた本書。

今から約50年前。

ほとんど何の知識もないまま、インドへと旅立った著者が直面するインドの現実。

人間、食べ物、言葉、芸術、思想…

とにかく見るもの接するもの全てに衝撃を受ける著者の様子が、

気取らない口語体で、コミカルかつ深い内容を、

テンポ良く綴っていく。


ただ、それだけで終わらないのが、この本の最大の魅力。

たとえて言うならば、

思考のミステリー


いわゆる推理小説の謎が、犯人やその動機にあるとするならば、

本書の謎は

後進国とされているインドが持ちえた強さと豊かさの源泉とは何か?”

本書の後半から、この謎が徐々に解き明かされていく。

謎を解く鍵となるのは、

①インド人医学生の言動 であり

夏目漱石川端康成サルトルなどの証言 であり

③洞窟内に響き渡る不快なこだま であり…

著者の頭にひっかかり続けていた謎が、

様々な要素の組み合わせにより、徐々に解き明かされていく。

とくに196ページからのクライマックスシーンは迫力あり!

がんばって脳を整理しながら読み進めていくと

「なるほどなぁ」と思わず口にでてしまいます。

そしてラストには、まさに最高の〆コメが待っています。



長年、読み継がれるのも納得の一冊です。

果たして今ベストセラーとしてもてはやされている本の中で

50年後も読まれているものがあるでしょうか?