魂の共鳴~長渕剛ライブにて~その1

原宿駅の改札を抜けた時点で、

自分を包み込む空気の異様さを肌で感じた。

大勢の人間、その一人一人が

体中に熱気を帯びて一箇所を目指して歩いていく。

僕もその人の流れに乗って、そこへ向かう。

程なく会場である国立代々木競技場 第一体育館前に着いた。

「まるで、祭りだな」

目の前に広がるその光景を目の当たりにし、まずそう思った。

道には屋台が並び、あちこちでギターを抱えて熱唱している男たちがいる。

そこを行き交う夥しい数の人。

それは予想していた若者や厳つい男たちだけではなかった。

男女関わらず、年配の方たちの姿も大勢目に付いた。

驚くほど多様な人間が、同じ目的を持って集まって来ているここは

長渕剛 アリーナツアー2007 Come on Stand up! FINAL 


僕にとって、ど真ん中の長渕のライブも初めてなら、ライブ自体もほぼ初めて。

初めて経験するその雰囲気に、

僕は驚くと同時に、自分の体内で次第に高まる高揚感を感じていた。

普段ほとんど着ず、多少の違和感を抱きながら、

それでも自分に気合を入れようと着てきた革ジャンも、

ここではごく当たり前に感じられた。


開演が近づき、館内に入る。

その大きさもさることながら、その熱気に圧倒された。

一人一人が放つエネルギーが集まって、体育館中に充満している。

それは、ちょっとした刺激で大爆発を起こしてしまうんじゃないかと思うほど。

まるで核爆弾の内部にいるような恐怖すら感じた。

僕は、2階の指定席に座る。

そこはステージからは遠いものの、会場全体がよく見渡せた。


開演予定時刻の六時になった。

主役はまだ出てこない。

会場内のエネルギーが加速度的に高まっていく。

もし、人間が放つエネルギーを充電しておける装置があるとするなら、

ライブ前、長渕の登場を待ちわびる会場ほど充電される場所はなんじゃないか。


予定時刻から15分ほど過ぎた時、

アナウンスが入り、場内が暗くなった。

やがて、激しい音楽ともともに、

中央のステージ上部にそびえる巨大なスクリーンに、長渕の映像が映し出された。

バイクに乗り、ボクシングをし、泳ぎ、そして歌う兄貴の姿。

それを見ながら、いつの間にか目頭が熱くなっていた。

まだ何も始まっていないのに。

まだ本人が出てきたわけでもないのに。

それは何とも筆舌しがたい感情だった。



映像が終わり、会場のボルテージが最高潮に達したとき、

ついにその時がやってきた。