苦役列車

最初は素直にも見えた貫多が、次第に卑屈にひん曲がっていく。

「もうちょっと上手く生きればいいものを」

そう思わせる場面が随所にあった。

ただ、そこを上手く出来ないからこそ、人間らしく、

見ていて引き付けられるものがあるのだろう。

万事上手くこなせる人間を見ていて面白いはずがない。

ボロボロになって、無言で机に向かうラストシーン。

書くという行為のその先で、

「苦役」は、鮮やかに報われるのだろう。

「読書が好き」という一点が、彼にとっての蜘蛛の糸だったに違いない。