RAILWAYS2

「運転手は、乗客に後姿を見せる仕事だ。」

「運転が上手いから無事故なのではない。


下手だからこそ、反省して、同じ失敗を繰り返さないようにしているんだ。」


いつからだろうか。

思っていることを口に出さないことが、

日本人の欠点として語られるようになったのは。

人は、思っていないことが口から出ることはない。

しかし、口に出ないことが、思いがないということではない。

思っていても言葉に出来ない思い。

そうやって溜まっていく思いは、

時に腐っていくこともあるけれど、

時間の熟成を経て、深みを増すこともある。


「電車」を起点に広がる物語。

いつも同じ時刻、同じ場所にやってくる電車。

乗客としては、それを当たり前と捉らえる。

ただ、日々変化する状況、

当然、関わる人達の事情も揺れる。

そんな変化することが常態の中で、

当たり前を感じていられること自体がすごいことだ。

当たり前とは、当たり前にしてくれる人をいてこそ成り立つものかもしれない。


登場する人々の微妙な心の揺れと、それを包み込む穏やかな風景が美しかった。


「心が乱れた時は、後ろを見ろ。後ろには乗客がいる。

それが、運転手が電車を走らせる理由だ。」