悪人

この世界には、善人も悪人もいない。

善い行為と悪い行為があるだけだ。

そんなことを言いながら、とかく人は決めつけたがる。

「あの人はいい人だから」 「あの人は悪い人だから」

それはどうしてなのか?

きっとそれは、決めつけてしまえば、楽だから。





「誰かに出会いたい」

彼、そして彼女のその想いは、ものすごい純粋で大切なものだったはず。

人には、そこを傷つけてはいけないというものが必ずあるものなのだ。


劇中で、被害者の父親の言った台詞が印象的だった。

「今は大切な人がいない人間が多過ぎる。

失うものがないことが、強い人間だと思っている。」

はっとさせられる言葉だった。

失うものがないことを強いことだと誇らしげに思ったことはない。

ただ、何かを大切に思うということは、

常にそれを失うリスクを背負っていかなければならない。

それでもなお、大切なものを持って生きている人の、なんと強いことか。




いい映画だった。

悪い行為をするのが必ずしも悪い人間であるとも限らなければ、

良い人間だから、必ず悪い行為をしないとも限らない。

人間というものを見た気がした。